「メルマガの開封率は悪くないのに、商談や売上に繋がらない」
「各部署がバラバラに動いており、顧客へのアプローチに一貫性がない」
BtoB事業を展開する中で、このような課題を感じてはいないでしょうか。もしメルマガの成果が頭打ちになっているとしたら、その原因はコンテンツや配信時間ではなく、「部署間の連携不足」にあるのかもしれません。
BtoBビジネスの成長は、マーケティング、営業、カスタマーサクセス(CS)という、顧客と接する各部署の連携なくしては実現しません。顧客は一人の人間として、一貫した体験を求めています。部署の壁を越えて連携し、顧客一人ひとりに最適な情報をメルマガで届けることで、初めて成果の最大化、すなわち顧客生涯価値(LTV)の向上が見込めるのです。
この記事では、私たちが見てきた成功事例を基に、メルマガの成果を最大化するための他部署連携術について、具体的な方法と成功の秘訣を解説します。
この記事の目次
なぜメルマガ成果の最大化に「部署連携」が必要なのか?
多くの企業では、各部署がそれぞれのKPIを追いかけています。
- マーケティング部門: リード獲得数、メルマガ開封率
- 営業部門: 商談化数、受注件数
- カスタマーサクセス部門: 契約更新率、解約率
これ自体は間違いではありません。しかし、各部署が分断された状態(サイロ化)で活動すると、次のような問題が発生します。
- マーケティングは「数」を追うあまり、質の低いリードを営業に渡してしまう。
- 営業はリードの背景(どんな情報に興味があるか)を知らないままアプローチし、空振りが多い。
- カスタマーサクセスは、営業が顧客とどんな約束をしていたかを知らず、顧客の期待とのズレが生じる。
結果として、顧客は「部署が変わるたびに同じ説明をさせられる」「求めていない情報ばかり届く」といった不満を抱き、エンゲージメントは低下します。メルマガも、ただ配信されるだけの「ノイズ」になってしまうのです。
部署連携は、この分断された顧客体験を「線」で繋ぎ、一貫した価値を提供するために不可欠です。メルマガをハブとして各部署が連携することで、顧客は自身の状況や興味に合った情報を受け取れるようになり、企業への信頼を高め、長期的な関係へと発展させることができます。
【役割別】メルマガにおける各部署の連携ポイント
メルマガの成果を最大化するためには、各部署がどのように連携すればよいのでしょうか。具体的な連携ポイントを役割別に見ていきましょう。
マーケティング部門と営業部門の連携
この2部門の連携は、質の高い商談を創出する上で最も重要です。
- 情報の共有: 営業担当者が顧客から直接聞いた「生の声」や「よくある質問」をマーケティングに共有します。マーケティングはその情報を基に、顧客の課題に寄り添ったメルマガコンテンツやホワイトペーパーを作成します。
- ホットリードの可視化: メルマガ内の料金ページや導入事例へのリンクをクリックした読者を「ホットリード」として定義し、その情報をリアルタイムで営業部門に共有します。営業は優先順位をつけて効率的にアプローチできます。
- コンテンツの共同制作: 営業部門が商談で使う資料や成功事例を、マーケティング部門がメルマガコンテンツとして再編集・配信します。これにより、コンテンツ制作の負担が軽減され、メッセージの一貫性も保たれます。
マーケティング部門とカスタマーサクセス部門の連携
顧客の定着と満足度向上(リテンション)において、この連携は大きな力を発揮します。
- VOC(顧客の声)の活用: カスタマーサクセス部門が集めた顧客からの要望や成功体験(VOC)は、マーケティングにとって宝の山です。これを基に、既存顧客向けの活用ノウハウメルマガや、新規顧客向けの導入事例コンテンツを作成します。
- オンボーディング支援: 新規契約後の顧客に対し、サービスの基本的な使い方や活用術を解説するステップメールを共同で企画・配信します。これにより、顧客の早期離脱を防ぎ、スムーズな利用開始を支援します。
- アップセル・クロスセルの機会創出: カスタマーサクセスが特定した優良顧客に対し、マーケティングが上位プランや関連サービスを紹介する限定メルマガを配信することで、効果的なアップセル・クロスセルに繋げます。
営業部門とカスタマーサクセス部門の連携
顧客満足度を維持し、長期的な関係を築くための連携です。
- 顧客情報のスムーズな引き継ぎ: 営業が把握した顧客の導入目的や課題、期待値をカスタマーサクセスに正確に伝えます。この情報を基に、カスタマーサクセスは顧客の成功に向けた最適なサポートを提供できます。
- 成功事例の共有: カスタマーサクセスが支援した顧客の成功事例を営業にフィードバックします。営業はその事例をメルマガのネタとしてマーケティングに共有したり、新たな商談で説得力のある材料として活用したりできます。
- 解約リスクの事前共有: カスタマーサクセスが検知した解約の兆候(利用率の低下など)を営業に共有し、連携してフォローアップ策を検討します。
部署連携を成功させる3つの秘訣
部署間の連携を絵に描いた餅で終わらせないためには、仕組みづくりが重要です。
- KGI・KPIを共有する
各部署の個別KPIだけでなく、「売上」「顧客生涯価値(LTV)」といった事業全体のKGI(重要目標達成指標)を共有することが最も重要です。共通のゴールを持つことで、部署の垣根を越えた協力体制が生まれやすくなります。 - 顧客情報を一元管理する
CRM(顧客関係管理)やMA(マーケティングオートメーション)ツールを導入し、すべての部署が同じ顧客情報にアクセスできる環境を整えましょう。誰がいつ、どんなアプローチをしたのか、顧客がどんな反応を示したのかが可視化されることで、連携の質が格段に向上します。 - 定期的なコミュニケーションの場を設ける
週に一度、あるいは月に一度でも構いません。各部署の代表者が集まり、情報交換を行う場を設けましょう。成功事例や課題を共有し、次のアクションを一緒に考えることで、一体感が醸成されます。
部署連携によるメルマガ施策の成功事例
事例1:営業とマーケの連携で商談化率が1.5倍に
あるBtoB企業では、マーケティング部門が獲得したリードの商談化率の低さに悩んでいました。そこで、営業とマーケで「ホットリード」の定義を共有。メルマガで特定のウェビナーに参加し、かつ料金ページのURLをクリックしたリードを最優先で営業がフォローする体制を構築しました。結果、メルマガ経由の商談化率が1.5倍に向上したそうです。
事例2:CSとマーケの連携で解約率が20%改善
あるSaaS企業では、契約初期の解約率の高さが課題でした。カスタマーサクセスが解約顧客にヒアリングしたところ、「初期設定の複雑さ」が原因であることが判明。その情報を基に、マーケティング部門がつまずきやすいポイントを解説する図解付きのオンボーディングメルマガをシリーズで配信したところ、初期解約率が20%改善されました。
事例3:3部門連携で問い合わせ数が12倍に増加
ある製造業の企業は、MAツールを導入し、3部門連携の仕組みを構築しました。営業やCSから得た顧客課題を基にマーケティングが課題解決型のメルマガを配信。メルマガへの反応が良い見込み客に営業がアプローチし、受注後はCSが手厚くフォローする流れを作った結果、ウェブサイト経由の問い合わせ数が前年比で12倍にまで増加したという事例があります。
まとめ
メルマガの成果を最大化する鍵は、テクニック論だけでなく、組織全体の「連携」にあります。マーケティング、営業、カスタマーサクセスがそれぞれの専門性を持ち寄り、顧客という共通のゴールに向かって協力することで、メルマガは単なる情報発信ツールから、事業成長を牽引する強力なエンジンへと進化します。
もし今、部署の壁を感じているなら、まずは隣の部署の担当者とコーヒーでも飲みながら、「最近、お客様からどんな声を聞きますか?」と話しかけることから始めてみてはいかがでしょうか。その小さな一歩が、大きな成果へと繋がるはずです。