「メルマガを配信しているが、開封率やクリック率はそこそこでも、本当に売上に貢献しているのか分からない…」
BtoBマーケティングに携わる多くの方が、このような悩みを抱えているのではないでしょうか。従来のメルマガ効果測定は、配信ツールで確認できる開封率やクリック率が中心でした。しかし、これらの指標だけでは、メルマガが最終的なコンバージョン(CV)にどれだけ貢献したのかを正確に把握することは困難です。
この記事では、メルマガの真の価値を可視化するための新常識、「GA4連携」と「アトリビューション分析」について、BtoB企業の担当者向けに分かりやすく解説します。
この記事の目次
1. なぜGA4でのメルマガ効果測定が重要なのか?
一般的なメルマガ配信ツールで分析できるのは、読者がメールを開封し、リンクをクリックするまでの行動です。しかし、本当に知りたいのは、その後のWebサイトでの行動、つまり「どのページを閲覧し、資料をダウンロードし、最終的に問い合わせに至ったのか」ではないでしょうか。
GA4(Googleアナリティクス4)を連携させることで、この「クリックの先」のユーザー行動を詳細に追跡できるようになります。
- Webサイト上の行動把握: メルマガ経由で訪問したユーザーが、どのページを何分閲覧したか、どのコンテンツに興味を持ったかを把握できます。
- コンバージョン計測: 資料請求や問い合わせなど、設定したコンバージョンをメルマガ経由で何件獲得できたかを正確に計測できます。
- 費用対効果(ROI)の可視化: メルマガ施策にかけたコストに対し、どれだけの売上貢献があったかをデータに基づいて評価できます。
パラメータを設定しなかった場合、メルマガからの流入は「(direct) / (none)」と表示され、どこから来たユーザーなのか判別できなくなってしまいます。GA4連携は、メルマガ施策の価値を正しく評価するための第一歩なのです。
2. GA4連携の第一歩!UTMパラメータの設定方法
GA4でメルマガの効果を正確に計測するには、メルマガ内のリンクに「UTMパラメータ」という特別な情報を付与する必要があります。これは、いわばWebサイトへの通行手形のようなもので、「どのメルマガから来たユーザーか」をGA4に伝える役割を果たします。
UTMパラメータは、主に以下の3つを設定します。
パラメータ | 説明 | 設定例 |
---|---|---|
utm_source | 流入元(どこから来たか) | mailmagazine |
utm_medium | メディア(何を使って来たか) | email |
utm_campaign | キャンペーン名(どの施策か) | 202410_new_product |
これらのパラメータを付けたURLをメルマガに設置することで、GA4は「2024年10月の新製品案内のメールマガジンから来たユーザー」として認識し、その後の行動を追跡できるようになります。
3. アトリビューション分析とは?メルマガの「隠れた貢献」を可視化する
BtoB商材は、顧客が製品を認知してから購入に至るまでの検討期間が長く、その間に広告、SNS、展示会、そしてメルマガなど、様々なマーケティング施策に接触します。
ここで問題になるのが、「コンバージョンに直接つながった最後の接点(例:検索広告)だけを評価して良いのか?」という点です。
サッカーでゴールを決めた選手だけでなく、その前にパスを出した選手も評価されるように、マーケティングにおいても、コンバージョンに至るまでの全ての施策の貢献度を評価するのが「アトリビューション分析」です。
メルマガは、直接的なコンバージョンだけでなく、
- 製品の認知度を高める
- 見込み客の興味を育成する
- 検討段階で比較情報を提供する
といった「アシスト」の役割を果たしていることが多々あります。アトリビューション分析は、こうしたメルマガの「隠れた貢献」をデータで証明する強力な手法です。
4. GA4で実践!5つのアトリビューションモデル
GA4では、貢献度をどのように評価するかに応じて、いくつかの「アトリビューションモデル」が用意されています。ここでは代表的な5つのモデルを紹介します。
モデル名 | 評価方法 | BtoBでの活用シーン |
---|---|---|
終点モデル | 最後にCVした接点のみを100%評価 | 刈り取り目的の広告や、CV直前の施策評価に |
起点モデル | 最初に接触した接点のみを100%評価 | 認知度向上が目的のブランディング施策や、新規顧客獲得のきっかけを評価したい時に |
線形モデル | 全ての接点を均等に評価 | 複数のチャネルが同等に重要と考える場合に |
減衰モデル | CVに近い接点ほど高く評価 | 検討期間が短い商材や、販売促進キャンペーンの評価に |
接点ベースモデル | 最初と最後の接点を高く評価(例:各40%)、中間を低く評価(例:各10%) | 認知(起点)と刈り取り(終点)の両方を重視したい場合に最適 |
例えば、あるユーザーが「お役立ち情報メルマガ」で製品を認知し、その後「事例紹介メルマガ」を読み、最終的に「製品名で検索」してCVした場合、
- 終点モデルでは「検索」が100%評価されます。
- 接点ベースモデルでは「お役立ち情報メルマガ」と「検索」がそれぞれ高く評価されます。
どのモデルが最適かは、商材やマーケティング戦略によって異なります。複数のモデルで分析し、各施策の多面的な役割を理解することが重要です。
5. BtoB企業における実践的な活用事例
ここで、架空のBtoB SaaS企業A社の成功事例を見てみましょう。
【課題】
A社は週に1回、業界のトレンドやノウハウを解説する「お役立ち情報メルマガ」を配信していました。クリック率は高いものの、そのメルマガから直接的な商談につながるケースは稀で、社内では「コストの無駄ではないか」という声が上がっていました。
【施策】
GA4連携とアトリビューション分析を導入。「終点モデル」と「接点ベースモデル」で貢献度を比較分析しました。
【発見】
- 終点モデルで分析すると、やはりメルマガの貢献度は低く、商談のほとんどは「Web広告」や「自然検索」が起点でした。
- しかし、接点ベースモデルで分析すると、驚くべき事実が判明しました。商談に至った顧客の約40%が、最初の接点として「お役立ち情報メルマガ」に接触していたのです。メルマガが、見込み客の「認知」と「興味喚起」に大きく貢献していたことがデータで証明されました。
【改善】
この結果を受け、A社はメルマガの価値を再評価。廃止の危機を乗り越え、むしろコンテンツの質を向上させるための追加予算を確保しました。結果、メルマガを起点とする質の高いリードが増加し、半年後には全体の商談数が1.5倍に増加しました。
まとめ
メルマガの効果測定は、もはや開封率やクリック率を眺めるだけでは不十分です。
- GA4連携で、クリックの先のユーザー行動と最終的なコンバージョンを追跡する。
- アトリビューション分析で、直接的な成果だけでなく、メルマガの「隠れた貢献」も正しく評価する。
この2つを実践することで、データに基づいた的確な意思決定が可能になり、BtoBマーケティングの成果を最大化することができます。ぜひ、あなたの会社のメルマガ施策も見直してみてはいかがでしょうか。