【物語】崖っぷち社長の挑戦 #8

「新たな挑戦と採用戦略の大転換」

概要: 会社の危機を乗り越えた未来製作所は、新たな事業への挑戦を決意。それに伴い、健一と葵はこれまでの採用戦略を根本から見直し、新たな仲間を迎え入れる。

次なる一手

一連の騒動が落ち着き、未来製作所の経営はようやく安定の兆しを見せ始めていた。社員たちの士気も高く、工場には活気が満ちている。しかし、健一と葵は満足していなかった。
「社長、今回の件で、特定の大口取引先に依存する経営のリスクを痛感しました。今後は、より多角的な事業展開を目指すべきです」
葵の提案は、健一も考えていたことだった。未来製作所の持つ技術力を活かし、新たな分野に挑戦する時期が来ているのかもしれない。

新事業への挑戦

健一と葵は、市場調査を重ね、成長が見込める医療機器部品の分野に参入することを決意した。これまでの主力だった自動車部品とは異なる分野であり、高い精度と専門知識が求められる。まさに、未来製作所にとって新たな挑戦だった。
新事業の立ち上げには、当然ながら新しい人材が必要となる。これまでのような「誰でもいいから来てくれ」という採用では、到底太刀打ちできない。

採用戦略の大転換

「これまでの採用は、待ちの姿勢でした。これからは、私たちが欲しい人材を明確にし、積極的にアプローチしていく必要があります」
葵は、採用戦略の抜本的な見直しを提案した。まず、新事業に必要なスキルや経験を持つ人材像を具体的に定義。そして、ハローワークだけでなく、専門性の高い人材が集まる求人サイトや、大学の研究室との連携も視野に入れた採用チャネルの開拓を進めた。
さらに、葵は「採用ピッチ資料」の作成を提案。これは、会社のビジョンや事業内容、働く環境などを魅力的にまとめた資料で、求職者に「この会社で働きたい」と思わせるための強力なツールとなる。
「うちみたいな小さな会社に、そんな立派な資料なんて…」
健一は少し気後れしたが、葵は自信満々だった。
「中小企業だからこそ、魅力をしっかりと伝える努力が必要なんです。私たちの熱意を、言葉とデザインで表現しましょう」

新しい仲間たち

葵が中心となって刷新された採用活動は、すぐに結果となって現れた。新事業への情熱と未来製作所の可能性に共感した、若く優秀な技術者や営業経験者が、次々と応募してきたのだ。
面接では、健一と葵が会社の未来を熱く語り、応募者もまた、自分の夢や目標を語った。かつての「お願いだから来てください」という採用とは全く異なる、対等で前向きなコミュニケーションがそこにはあった。
こうして、未来製作所には新しい血が次々と流れ込み、新事業は力強くスタートを切った。古いものと新しいものが融合し、会社は新たな成長ステージへと足を踏み出そうとしていた。