「雨降って地固まる?社員たちの変化」
概要: 一連の騒動を乗り越え、社内の一体感が生まれてくる。葵の指導のもと、彼らは自ら考え行動するようになり、職場に活気が戻り始める。
苦難を乗り越えて
新日本精工と田畑の不正が明るみに出た後も、未来製作所の状況がすぐに好転したわけではなかった。失った取引先を取り戻すのは時間がかかり、資金繰りの厳しさも続いた。しかし、社内の雰囲気は明らかに変わり始めていた。
あれほど葵に反発していた古参社員たちも、彼女が会社を救うために身を粉にして働く姿を目の当たりにし、徐々にその見方を変えていった。特に、葵が不正の証拠を集めるために徹夜で資料を分析したり、冷静かつ毅然とした態度で取引先と交渉したりする姿は、彼らにとって衝撃的だったようだ。
生まれた一体感
「社長、佐伯さん、すまなかった。俺たち、間違ってたよ」
ある朝、斉藤をはじめとする古参の職人たちが、健一と葵の前に頭を下げた。
「佐伯さんの言う通り、俺たちは古いやり方に固執しすぎていた。これからは、あんたの指示に従う。未来製作所を立て直すために、何でも言ってくれ」
その言葉に、健一と葵は顔を見合わせ、静かに微笑んだ。長かったトンネルに、ようやく光が差し込んできた瞬間だった。
この一件を境に、未来製作所にはこれまでになかった一体感が生まれた。社員たちは、葵が提案する改善策にも積極的に取り組み始め、日々の業務の中で「もっとこうしたらどうか」といった意見も活発に出るようになった。
自ら考え行動する社員たち
葵は、ただ指示を出すだけでなく、社員一人ひとりの能力を引き出すような指導を心がけた。
「斉藤さん、この新しい加工方法について、どう思われますか?長年の経験から見て、何か改善点はありますか?」
「山田君、君の作ったあの治具、すごく効率的だね。他の工程でも応用できないかな?」
葵に意見を求められ、褒められることで、社員たちは自信を取り戻し、自ら考えて行動するようになった。かつては指示待ちだった彼らが、目を輝かせて仕事に取り組む姿は、健一にとって何よりも嬉しい変化だった。
蘇る工場の活気
工場には、以前のような活気が戻りつつあった。機械の音、社員たちの笑い声、そして時折響く葵の的確な指示。健一は、この光景を見ながら、父から受け継いだこの場所を守り抜く決意を新たにする。
もちろん、経営状況が完全に回復したわけではない。しかし、今の未来製作所には、どんな困難も乗り越えられるという確かな手応えがあった。雨は上がり、固まった地面の上には、新しい芽が力強く顔を出し始めていた。