【物語】崖っぷち社長の挑戦 #6

「葵の秘策と意外な協力者たち」

概要: 絶体絶命のピンチに、葵が意外な秘策を打ち出す。そして、かつて未来製作所を去った者たちや、町の仲間たちが健一のもとに集い始める。反撃の狼煙は上がるか。

葵の秘策

「諦めるのは早い、と言ったな、佐伯君。だが、もう打つ手がないじゃないか…」
健一は力なく首を振った。しかし、葵の瞳にはまだ闘志が宿っていた。
「いいえ、社長。一つだけ、方法があります。今回のクレームは、巧妙に仕組まれたものだと私は考えています。それを証明できれば、状況は一変するはずです」
葵が示したのは、クレームのあった部品の徹底的な成分分析と、製造記録の洗い直しだった。さらに、新日本精工の内部事情に詳しい協力者を探し出し、田畑の不正の証拠を掴むという、大胆な計画だった。
「そんなこと、できるのか…?」
健一の問いに、葵は静かに頷いた。

意外な協力者

葵の計画は、すぐに行動に移された。まず、葵が以前コンサルタント時代に培った人脈を使い、大学の研究室に部品の分析を依頼。同時に、健一はかつて未来製作所を円満に退社し、今は別の会社で働いている元社員たちに連絡を取った。彼らの中には、田畑のやり方に疑問を感じていた者もいたのだ。
「社長、もし田畑さんが本当にそんなことをしているなら、許せません。俺たちにできることがあれば、協力しますよ」
元社員の一人、若手の技術者だった村松が、そう言ってくれた。彼の言葉は、健一にとって大きな勇気となった。
さらに、未来製作所が長年世話になってきた地元の材料屋や運送会社の社長たちも、健一の窮状を知り、「何か手伝えることはないか」と声をかけてくれた。彼らにとっても、未来製作所は大切な取引先であり、町の仲間だったのだ。

反撃の狼煙

数日後、大学の研究室から衝撃的な分析結果が届いた。クレームのあった部品から、未来製作所では使用していないはずの特殊な添加物が検出されたのだ。これは、外部の何者かが意図的に部品に手を加えた可能性を示唆していた。
さらに、村松たち元社員の調査で、新日本精工がギガ電機から大量の仕事を受注するために、田畑が未来製作所の機密情報を不正に利用していた証拠が次々と明らかになった。
「これで、戦える…!」
健一は、集まった証拠を手に、葵と共に反撃の準備を始めた。まず、クレームを入れてきた取引先に対し、分析結果と田畑の不正の証拠を提示。そして、マスコミにもこの事実をリークする準備を進めた。

試される正義

未来製作所の反撃は、業界に大きな波紋を広げた。新日本精工と田畑の不正は公になり、ギガ電機も対応に追われることになる。
しかし、一度失った信用を取り戻すのは容易ではない。未来製作所の戦いは、まだ始まったばかりだった。正義は勝つのか。それとも、大企業の力と不正の前に、小さな町工場は再び飲み込まれてしまうのか。健一と葵、そして彼らを支える仲間たちの、本当の力が試されようとしていた。