【定着】「研修やってるつもり」になってない?中小企業の人材育成の落とし穴

「うちの会社でも研修はちゃんとやっている」――そう思っている経営者や採用担当者の方も多いのではないでしょうか。しかし、その研修、本当に社員の成長につながり、会社の力になっていますか? もしかしたら、「研修をやっているだけ」で満足してしまい、効果の出ない「つもり研修」に陥っているかもしれません。

多くの中小企業では、限られた時間や予算の中で、なんとか人材育成に取り組もうと奮闘しています。しかし、その努力が空回りしてしまうケースも少なくありません。今回は、中小企業が陥りがちな人材育成の落とし穴と、その現状について考えてみましょう。

「時間がない」「教えられる人がいない」…中小企業の厳しい現実

商工中金が2022年に行った調査によると、中小企業が人材育成で最も課題に感じているのは「時間的余裕がない」ことで、実に44.8%にものぼります。日々の業務に追われ、研修や教育に十分な時間を割けないのが実情のようです。

また、「指導・教育ができる従業員が社内にいない」「体系だった育成プログラムの策定が難しい」といった声も多く聞かれます。大企業のように専門の部署があるわけではなく、育成ノウハウが不足しているケースも少なくありません。その結果、OJT(On-the-Job Training)に頼らざるを得ないものの、担当する上司や先輩によって教え方にばらつきが出てしまい、質の高い教育が提供できないという問題も発生しています

効果が出ない研修に共通する「失敗パターン」

せっかく研修を実施しても、現場で活かされなければ意味がありません。「研修しても成果が見えない」「やりっぱなしで終わっている」と感じている企業は少なくないでしょう

効果が出ない研修には、いくつかの共通点が見られます。

  • 目的が曖昧で、ゴールが共有されていない:「とりあえず研修をやっている」という状態では、社員のモチベーションも上がりません。
  • 座学ばかりで実践につながっていない:知識を詰め込むだけでは、実際の業務で使えるスキルは身につきません。
  • 現場との連携が取れていない:研修内容が現場の実態と乖離していては、学んだことが活かされません。
  • 研修後のフォロー体制がない:研修で学んだことを定着させ、行動変容を促すためには、継続的なフォローアップが不可欠です。
  • トップのコミットメント不足:経営層が研修の重要性を理解し、積極的に関与する姿勢がなければ、組織全体に研修文化は根付きません。

さらに、中小企業特有の課題として、新入社員や同じ経験年数の従業員が少ないため、研修の動機付けや学習意欲の向上が難しいという点も挙げられます

「研修やったから終わり」では未来はない

株式会社エフェクトの調査では、中小企業の約85%が人的資本経営を重視しているものの、実際に満足のいく研修を実施できている企業は2割未満という厳しい実態が明らかになっています。さらに、4割以上の企業が「何も研修を行っていない」と回答しており、研修の重要性を理解しつつも、効果や持続性への不安から優先順位が下がってしまっているようです

しかし、人材育成を怠ることは、将来的に企業の競争力低下に直結します。社員が成長しなければ、組織も成長しません。今こそ、「研修やってるつもり」から脱却し、本当に効果のある人材育成とは何かを真剣に考える時ではないでしょうか。

あなたの会社の人材育成は、本当に大丈夫ですか? 一度立ち止まって、現状を見つめ直してみませんか。